2025年10月下旬の爽やかな秋の朝、19人の上座部じょうざぶ仏教の僧侶そうりょと1匹ぴきの救命犬きゅうめいけんアロカからなる一団が、テキサス州フォート・ワースの仏教センターを出発した。主催者によると、この徒歩による旅は約4ヶ月をかけておよそ3,700キロメートルを進む壮大そうだいな計画である。

一行の旅程は、テキサス州からルイジアナ州、ミシシッピー州などを経由けいゆし、2月中旬までにワシントンD.C.の国会議事堂に到着することを目指している。そこで、リーダーのビック・バンナカラ師は、釈迦しゃかの誕生と悟さとりを祝う仏教の祝日「ウェーサーカー祭り」の開催許可を政府に求める予定だ。

この「ピース・ウォーク」は、主催団体が仏教の歩行瞑想めいそうや頭陀行ずだぎょうという修行から着想を得て企画した巡礼じゅんれいである。頭陀行ずだぎょうとは、質素しっそな生活を通して欲望よくぼうから離れ、困難に負けない精神力と、ありのままを受け入れる心を育はぐくむことを目指す修行だ。僧侶そうりょたちはスローガンを叫さけんだりプラカードを掲かかげたりせず、ほぼ裸足はだしで静しずかに祈りながら歩く。その姿は、慈悲じひと心の平穏へいおんを静かしずかに訴うったえ、地元の人々の心を動うごかしている。

彼らが道中の町や市に立たち寄より、公園や教会などで休息きゅうそくをとる様子は、住民やメディアの注目を集あつめることもあった。

このピース・ウォークは多くの人々の関心を集あつめ、インターネットを通とおして僧侶そうりょたちの旅を追おう人々もいる。あるウェブサイトでは、一行いっこうの現在地をライブマップで確認することができる。このサイトには写真やビデオも頻繁に更新され、東へ向かう僧侶そうりょたちの修行の様子や、地方自治体による歓迎の様子、地元住民が投稿した旅の記録などを見ることができる。SNSでの支援者しえんしゃたちは、この活動が大きな反響を呼よんでいると発信しており、僧侶そうりょたちのフェイスブックのフォロワーは、この記事が書かれた時点で60,000人を超えている。

しかし、僧侶そうりょたちは数々の困難にも直面ちょくめんした。例えば2025年11月には、テキサス州の高速道路で先導車がトラックと衝突しょうとつする事故が起おこった。この事故で2人の僧侶そうりょが負傷ふしょうし、1人は片足かたあしを切断せつだんする大怪我おおけがを負おった。それでも世界中の人々が彼らの活動を見守みまもり続つづけた。事故により一時中断を余儀よぎなくされたが、一行いっこうが歩あるき続つづける決意けついを示しめすと、世界中から支援しえんの声が寄よせられた。

ピース・ウォークの源流げんりゅうには、古代こだい仏教における巡礼じゅんれいの伝統がある。世俗せぞくの社会を巡めぐることは、精神的せいしんてき・道徳的どうとくてきに重要じゅうような意味いみを持もつとされてきた。パーリ語でカンカマと呼よばれる歩行瞑想めいそうは、釈迦しゃかとその弟子でしたちが行った、歩くことに意識を集中させる修行である。また、上座部じょうざぶ仏教の禁欲的きんよくてきな修行である頭陀行ずだぎょうは、長距離ちょうきょりを歩くことで執着心しゅうちゃくしんを捨すて、すべての生命せいめいへの愛を深ふかめることを目的としている。

20世紀には、ティック・ナット・ハンやマハ・ゴサナンダといった著名ちょめいな僧侶そうりょたちが、平和を祈る歩行瞑想めいそうを通とおして社会に貢献こうけんした。彼らの活動は、単たんなる宗教しゅうきょう活動に留とどまらず、戦争や紛争ふんそうの中なかで信仰しんこうを行動こうどうで示しめす一ひとつの形かたちとなった。

アメリカでの僧侶そうりょの巡礼じゅんれいと似にた活動が、大西洋を越こえたイギリスでもこの冬に行われた。今年1月3日、南スーダン共和国きょうわこく出身のギエル・マルアルさんと幼おさななじみのジョン・クエイさんが、「スーダンのための自由への長い道のり」と名付なづけられた徒歩とほ旅行を始めた。この活動は、情報発信メディア「アサイラム・スピーカーズ」の支援しえんを受うけている。

人権じんけん擁護ようご活動家である彼らの目的は、募金ぼきんと啓蒙けいもうである。イングランド南部からスコットランドまでの約1,126キロメートルを歩き、今いまも続つづくスーダン内戦ないせんによって国くにを追おわれ、隣国りんごくチャドの避難民ひなんみんキャンプで暮くらす子こどもたちのための小学校を建設けんせつする資金しきんを集あつめた。この活動は大きな反響を呼よび、すでに2校分こうぶんの建設けんせつ資金しきんが集あつまったという。

なぜ歩き始めたのか、ギエル・マルアルさんは「スーダンの子こどもたちが置おかれている状況じょうきょうに身みを置おき、安全あんぜんな場所まで何百マイルも歩かなければならない日ひ々の苦くるしみを少しでも感かんじ取りたかった。彼らと魂たましいでつながるために歩いたのです」と語かたった。

二人の旅は1月23日に終わり、33日間で10万英ポンド(約2100万円)以上の寄付きふを集あつめた。

このイギリスでの活動は、地域のリーダーたちからも支援しえんを受うけた。ある市の前ぜん市長は二人を歓迎し、スーダンの人道じんどう危機ききについて強つよく訴うったえた。スーダン内戦ないせんは何百万人なんびゃくまんにんもの避難民ひなんみんを生うみ、教育を含ふくむ基本的きほんてきな社会サービスを低下ていかさせている。二人と支援者しえんしゃたちにとって、この取とり組くみは政治的なデモではなく、国際メディアにほとんど取とり上あげられないこの危機ききを世界に知しらせるための連帯れんたいの証あかしなのである。

「スーダンのための自由への長い道のり」は、イギリスで行われた平和と連帯れんたいのための一連いちれんの行動の一ひとつである。2024年6月には、様々さまざまな宗教しゅうきょうの教団きょうだんが集あつまり、ロンドン中心部を静しずかに行進こうしんした。彼らはパレスチナの平和を祈願きがんし、世界中の戦争で命いのちを落おとした人々を追悼ついとうした。白しろい花を手てにした参加者さんかしゃたちはスローガンを叫さけぶことなく、その時間は政治的な抗議こうぎというよりも、内省的ないせいてきで敬虔けいけんなものであった。

アメリカの仏教僧そうの巡礼じゅんれいとイギリスの「スーダンのための自由への長い道のり」は、平和や人道じんどう問題に対たいして行動こうどうするため、人々ひとびとが長距離ちょうきょりを歩くという大おおきな潮流ちょうりゅうの一例いちれいである。専門家によれば、平和を求もとめる巡礼じゅんれいや徒歩とほ旅行は現代史の様々さまざまな場面ばめんで見みられ、今いまでは宗派しゅうはを超こえて人権じんけん擁護ようご活動としても行われている。「歩あるく」という単純たんじゅんな行動こうどうは、その粘ねばり強づよさによって人ひと々の注目ちゅうもくを集あつめることができる。そして、日常生活にちじょうせいかつの中なかで非暴力ひぼうりょくを実践じっせんし、問題もんだいについて深ふかく考かんがえるよう人々ひとびとを促うながすのである。

冬ふゆが深ふかまり、アメリカの僧侶そうりょたちは歩あゆみを進すすめ、2月中旬にはワシントンD.C.に到着とうちゃくする見込みこみだ。彼らは、心こころを一ひとつにして内うちなる平和を分わかち合あうというメッセージを携たずさえている。一方イギリスでは、スーダンとの連帯れんたいを示しめした長距離ちょうきょり徒歩とほ旅行が成功せいこうを収おさめ、戦争で避難ひなんを余儀よぎなくされた子こどもたちへの認識にんしきを広ひろげ、具体的ぐたいてきな支援しえんへとつなげた。