今、世界中の多くの人が、将来しょうらいに不安ふあんを感かんじたり、社会しゃかいに怒いかったりしています。このような人ひと々の気持きもちが広ひろがる中なかで、「ポピュリスト」と呼よばれる政治家せいじかたちが人気にんきを集あつめています。彼かれらは、社会しゃかいの難むずかしい問題もんだいについて「答こたえはとても簡単かんたんだ」と話はなし、人々ひとびとを惹ひきつけます。

第二次世界大戦だいにじせかいたいせんが終おわった後あと、多おおくの国くにで「自由じゆうな民主主義みんしゅしゅぎ」が一番いちばん良よい政治せいじの形かたちだと考かんがえられてきました。しかし、この考かんがえは最近さいきん、いろいろな出来事できごとによって少すこしずつ弱よわくなっています。例たとえば、2001年ねんのアメリカのテロ、2008年ねんの世界的せかいてきな金融危機きんゆうきき、2015年ねんのヨーロッパの難民問題なんみんもんだいなどです。そして、新型しんがたコロナウイルスのパンデミックは、国くにと国くにの間あいだの人ひとの移動いどうを止とめました。その結果けっか、「自分じぶんの国くにを一番いちばんに考かんがえて、国境こっきょうを閉とじて国くにを強つよくするべきだ」という考かんがえが再ふたたび注目ちゅうもくされるようになりました。さらに、気候変動きこうへんどうの問題もんだいや、人ひと々の間あいだの格差かくさが大おおきくなること、物価ぶっかが上あがり続つづけて生活せいかつが苦くるしくなることなど、たくさんの心配事しんぱいごとがあります。そのため、今いまの政府せいふや民主主義みんしゅしゅぎの仕組しくみを信しんじられなくなる人ひとが増ふえているのです。

人々ひとびとが不安ふあんや不満ふまんを感かんじている時とき、「すべての問題もんだいは移民いみんのせいだ」というような、一ひとつの原因げんいんにまとめる単純たんじゅんな話はなしが広ひろがりやすくなります。経済けいざいの調子ちょうしが悪わるくなったり、病院びょういんや学校がっこうなどの公共こうきょうサービスが足たりなくなったりすると、移民いみんがその原因げんいんだと非難ひなんされることがあります。ポピュリストの政治家せいじかは、「家いえの値段ねだんが高たかいのも、あなたの仕事しごとがなくなるかもしれないのも、全部ぜんぶ移民いみんが来きたからだ」と分わかりやすく説明せつめいします。しかし、本当ほんとうの理由りゆうはもっと複雑ふくざつです。実際じっさいには、移民いみんは国くにの経済けいざいを大おおきくし、税金ぜいきんを払はらって政府せいふを助たすけることも多おおいのです。でも、難むずかしい問題もんだいに直面ちょくめんした人々ひとびとは、一ひとつの簡単かんたんな答こたえに心こころを引ひかれてしまいます。そして、「この問題もんだいを解決かいけつできるのは、強つよいリーダーだけだ」と考かんがえるようになります。

強つよいリーダーに頼たよるという考かんがえは、「私わたしにすべての力ちからをください。そうすれば国境こっきょうを閉とじて、あなたの国くにを昔むかしのように戻もどします」という約束やくそくにつながります。アメリカのトランプ元大統領もとだいとうりょうや、イギリスがEUを離はなれた時ときの「コントロールを取とり戻もどせ」という言葉ことばがその例れいです。また、ソーシャルメディア(SNS)のような新あたらしい技術ぎじゅつも、この動うごきを速はやくしています。SNSでは、正ただしいかどうか分わからない情報じょうほうがすぐに広ひろまります。インターネット上じょうの閉とじたグループの中なかでは、同おなじ意見いけんの人ひとばかりが集あつまるため、過激かげきな考かんがえがまるで多おおくの人ひとに支持しじされているように見みえてしまいます。こうしてネットで大おおきくなった人々ひとびとの不満ふまんが、ある日ひ突然とつぜん、実際じっさいの政治せいじの世界せかいで大おおきな力ちからになることがあるのです。

今いま、自由じゆうな民主主義みんしゅしゅぎは大おおきな岐路きろに立たっています。一ひとつの道みちは、社会しゃかいの複雑ふくざつな問題もんだいを正直しょうじきに説明せつめいし、間違まちがいを直なおし、みんなが豊ゆたかになれる社会しゃかいをもう一度いちど目指めざす道みちです。もう一ひとつの道みちは、国くにの周まわりに壁かべを作つくり、誰だれかを問題もんだいの原因げんいんにして、強つよいリーダーにすべてを任まかせてしまう道みちです。社会しゃかいにある人ひと々の怒いかりは、本物ほんものです。だからこそ、その怒いかりが、問題もんだいを作つくった本当ほんとうの原因げんいんではない人ひとたちに向むけられてしまう危険性きけんせいに、私たちは注意ちゅういしなければなりません。