この記事は SciDev.Net の報道(CC BY 2.0)をもとにした日本語訳です。

新しい研究により、熱帯地域におけるカカオの収量しゅうりょうにとって最大の気候的脅威の一つは、異常な豪雨であることが明らかになった。気温の上昇や水不足よりも生産に大きな損害を与える可能性があるという。

科学誌PNASに掲載されたこの研究は、カカオの生産不足が、その栽培を主な収入源とする約600万人の農家の生活を脅おびやかしていると指摘する。しかし、米ハーバード大学の研究者らによれば、こうした不作の背後にある要因はこれまで十分に解明されていなかった。

研究チームは、世界のカカオ生産量上位国であるガーナ、インドネシア、エクアドルの降雨パターンを分析した。その結果、激しい豪雨がカカオの花や未熟な果実(カカオポッド)を物理的に傷つけ、昆虫による受粉じゅふんを妨さまたげ、さらに過剰な湿度が原因で真菌性しんきんせいの病気を引き起こすことを突き止めた。

ハーバード大学地球惑星科学科の研究員で、論文の責任著者であるアンナ・リー・オルブライト氏は、「激しい雨や風は、カカオの花や若い果実を物理的に傷つけます。カカオの受粉じゅふんは微小びしょうな昆虫に依存していますが、豪雨はその活動を妨さまたげる可能性があります。また、極度きょくどに湿った環境は真菌性しんきんせいの病気、特に黒腐病こくふびょうの発生を促うながし、その胞子ほうしは雨の飛沫ひまつによって拡散します」と説明する。

研究者らは、今回の発見が、気候と作物の収穫を関連づけた予測が小規模農家の気候変動への適応にいかに役立つかを浮うき彫ぼりにしていると述べる。異常な豪雨は多くの場合予測が可能であり、エルニーニョ現象のような大規模な気候現象と関連していることが多いという。

研究によれば、エルニーニョ現象の発生時には、西アフリカとインドネシアでは通常、降水量が減少する一方、エクアドル沿岸部えんがんぶや東アフリカでは激しい豪雨に見舞みまわれる傾向がある。

世界のカカオの約7割が生産される西アフリカでは、エルニーニョ現象が発生していない時期においても、雨季の最も激しい降雨が年々強まる傾向にあるとオルブライト氏は指摘する。世界全体のカカオ生産のうち、中南米地域は約25%を占め、中でも同地域最大の生産国であるエクアドルが約12%を供給している。

エクアドルでは、特に強力なエルニーニョ現象が発生すると、被害の大きい雨季になるリスクが著いちじるしく高まる。2月から4月にかけてエクアドル沿岸部えんがんぶを襲おそう豪雨が、その6~8カ月後の収穫量に深刻な影響を及およぼすという。この研究結果は、12月にピークを迎えると予想される強力なエルニーニョ現象が勢いを増している現在、特に重要な意味を持つ。

この研究に関与かんよしていない、米州農業協力研究所(IICA)のカカオ専門家であるエリザベス・ジョンソン氏も、豪雨と真菌性しんきんせいの病気の発生には直接的な関連があると指摘する。「湿度の高い状態が続くことは、いくつかの主要な真菌性しんきんせい病害の発生と蔓延まんえんを助長じょちょうする可能性があります」と述べた。

研究の共著者であるハーバード大学のピーター・ハイバース氏は、黒腐病こくふびょうが主要な原因の一つであると述べる。「(真菌による)感染は、降雨の約1週間後に発生し、胞子ほうしは雨の飛沫ひまつによって拡散します」。また、雨季には花や若い果実への直接的な物理的損傷のリスクに加え、エルニーニョ現象の際に洪水が発生しやすい低地の沿岸平野部では、土壌が水浸しになる湛水たんすい被害のリスクもあると付け加えた。

一方で、外部の専門家らは、降雨の影響は農園の管理状態によって大きく異なると強調する。国際生物多様性センターと国際熱帯農業センター(CIAT)の農業環境研究者であるウィリアム・メロ・シパコン氏は、同じ降雨量でもすべてのカカオ農園が等しく影響を受けるわけではないと指摘した。「病気に弱い品種ひんしゅを栽培していたり、日陰が不十分であったり、技術的な管理レベルが低く、特に衛生えいせい的な剪定せんていが不足していたりする場合、異常な豪雨の影響はより大きくなる可能性が高いです」。

エクアドル国立農業研究所のカカオプログラムを率いるレイ・ガストン・ロール氏は、異常な豪雨が必ずしも収量の減少を意味するわけではないと主張する。「カカオの木は、その生理せいり的なサイクルの中で開花するためには、水分過多であれ干かんばつであれ、ある程度の水分ストレスを必要とします」。降雨が過剰に続くと植物は「警戒状態」に入り、雨が減り始めるとそれに反応して開花するため、結果的に収穫が遅れるのだという。しかし同氏も、特にエルニーニョのサイクル中には、農園管理を異常気象に適応させる必要がある点では同意しており、低地での排水はいすいの重要性を指摘した。

ハイバース氏は、カカオ栽培に特化したリスク警報システムがあれば、農家が事前に対策を講じることができると考えている。研究チームはすでにエクアドルと西アフリカの提携ていけい機関と協力し、豪雨の予報を農家が具体的な行動に移せるような情報に変換する取り組みを進めている。効果的な警報とは、降雨の見通しを、剪定せんていや衛生作業、殺菌剤さっきんざいの散布、排水はいすい設備の準備といった作業の最適なタイミングと結びつけるものであるべきだ、と彼は述べた。