台湾で、人気ユーチューバーの小玉(本名:朱玉宸)が著名人の偽アダルト動画を販売した容疑で逮捕された。この事件をきっかけに、AIを利用した犯罪やネット上の性暴力に対処する法整備の遅れに世間が注目している。
小玉は共犯者2名とともに、2020年7月からAIで生成した偽アダルト動画をテレグラム上で販売した容疑で10月17日に逮捕され、翌18日に保釈された。
少なくとも100人以上の政治家、ユーチューバー、有名人らが、この高度な技術を悪用した犯罪の被害者である。被害者らの顔はポルノ動画に合成され、金銭的な利益を得る目的で販売された。報道によると、台湾の蔡英文総統(2021年10月当時)も被害者の一人だ。彼女を素材にしたフェイク動画は露骨な性的描写はなかったものの、台湾で最も利用されるメッセージアプリ「LINE」から直ちに削除された。
台湾のミラーメディアが5月に行った調査報道によると、小玉らの制作チームは、ポルノサイト上で30秒ほどのフェイクポルノ動画を複数制作し、視聴者に対して、全編を視聴したければ会費を払ってテレグラムのグループメンバーに加わるよう勧誘していた。メンバーになると、テレグラムのグループに参加できる仕組みだ。世間の注目を集めるまでに、4つのテレグラムグループはおよそ8,000人ものメンバーを勧誘し集めていたことが明らかになった。
メンバーは新作動画の制作費を募るクラウドファンディングで、どの企画を支持するか投票できたほか、性的な妄想や元パートナーを辱める目的で、オーダーメイドのポルノ動画を注文することもできた。当局の推計によると、小玉らがこれらのポルノ動画から得た利益は、1,000万台湾ドル(約36万米ドル)に上るとされている。
小玉の逮捕以来、複数の被害者が声を上げている。高雄市議会議員である黄捷は、その中でも特に積極的に発信している。彼女は、今回の事件をきっかけに、AI犯罪が引き起こす被害について問題意識を持つべきだと訴えている。
「今年の5月、自分の顔が動画に使われていると聞いたとき、私は単なるパロディ動画だろうと想像しました。しかし、実際にその動画を目にすると、笑うことなどできず、吐き気を催しました。ぞっとしました。恐怖に打ちのめされました。小玉の意図が、悪ふざけなのか利益目的なのかは重要ではありません。私たち被害者が受けた心の傷と屈辱は、紛れもない現実なのです。
「リアリティ番組出身の女優やユーチューバーを含む、複数の被害者が私に個別に連絡を寄せました。私たちは共に立ち上がり、小玉を告発すると決めたのです。パソコンの画面越しに動画を見ている人々にも繰り返し警告しました。あなたたちは犯罪に加担している。あなたたちの下品な冗談と面白半分の視聴行為のせいで、被害者は何度も何度も傷つけられているのだと。」
「現在も、私たちは警察に対し、捜査の継続を求めています。そして世間にも、広がりつつあるAI犯罪に注意を払うよう訴えかけています。#don’t-download-and-spread-these-videos(動画のダウンロードや拡散はせず)、こんな低俗な人々には加担しないで。#don’t-create-another-Xiao-Yu(第二の小玉を生み出さないために)、こんな卑劣な風潮をこれ以上広げないで。そして最も重要なのは、議会に対する要求です。#sexual-violence-in-cyberspace(ネット上の性暴力)を注視し、あの凶悪な狼どもを処罰できるように法改正を行うこと……。」
女優のManaki(現在は解婕翎で活動)は、一部のネット民がこの事件を軽視したり、あまつさえジョークとして扱ったりすることに失望し、黄捷の投稿を共有した。
「あのような形で、自分の顔が他人に無断で合成されることは、明確な被害です。それを本物だと信じてしまう人がいるかもしれないんです。この事件で、私は精神的苦痛を味わいましたし、傷ついた名誉が回復することはありません。どうか、くだらないジョークとして片付けないでください。ネット上の性暴力問題に対する法整備が前進することを、心から願っています。」
民主進歩党所属の国会議員である高嘉瑜もAI犯罪被害者の一人である。彼女はフェイスブックで次のように指摘している。台湾の現行法では、偽アダルト動画による犯罪は名誉毀損罪でしか起訴できず、その刑罰も比較的軽微なものにとどまっているという。彼女もまた、ディープフェイクによるAI犯罪を抑止するための新法導入を提唱している。