ナイジェリアのラゴス。午前9時、朝のラッシュアワーによる渋滞が緩和し始めるころ、ヴィヴィアンはノートパソコンを開き、仕事の準備を始めます。
彼女の通勤は、寝室からオフィスを兼ねる隣の部屋までのわずか12歩です。部屋の中心には人間工学に基づいた椅子と大きな机が置かれ、そこには高性能なコンピューターや複数のモニターが並んでいます。
ヴィヴィアンはタイムカードを押す必要がなく、管理者に監視されることもありません。代わりに、チャットツールには彼女が運営マネージャーとして支援するアメリカのスタートアップ企業からの通知が次々と届きます。プロジェクト管理ツールでシンガポールからの最新情報を待ち、タスク管理ツールでカリフォルニアの業務開始時間までに終わらせるタスクを管理し、自身の稼働時間を記録するアプリも使っています。
ヴィヴィアンの勤務時間は複数のタイムゾーンに及びます。一度も訪れたことのない会社の本社とメールをやり取りし、屋外の蓄電池で停電を乗り越えます。夜までには、ナイジェリアの最低賃金の12倍に相当する金額を米ドルで稼ぎます。
彼女は、アフリカ各地で働き方を変革している世代の一人です。特定の組織に所属せず、ネットワークを通じてグローバルに活動しています。
一方、ガーナの首都アクラでは、蒸し暑くなる前の午前6時に、ダイアナ・アクムカドアが配車アプリのドライバーとしての一日を始めます。アフリカの多くの都市で配車サービスは定着しつつありますが、女性ドライバーはまだ珍しく、乗客を驚かせることがあると言います。彼女によると、乗客は運転手が女性だと気づくと一瞬の沈黙がありますが、車が走り出すとその驚きから会話が生まれることも多いそうです。
午前10時ごろには、交通量が増して渋滞する道路をすでに何時間も運転しています。日によっては14時間働くこともあれば、予約のキャンセルが相次ぎ、早めに仕事を切り上げて帰宅する日もあります。
「この仕事は自立のチャンスを与えてくれます」とダイアナは語ります。しかし、「それなりのリスクも伴います。もし何かトラブルが起きても、すべて自分で対処しなければなりません」。
彼女にとって、柔軟な働き方は、子供の学校の予定に合わせて勤務時間を組めるという利点があります。一方で、ガソリン代や車の維持費、プラットフォームへの手数料は自己負担です。この手数料は1回の乗車料金の30%に達することもあります。それでもダイアナは、この仕事のおかげで、急成長する都市で日々の生活を送りながら「自分のやり方で稼げる」のだと言います。
オンライン・ギグワークは、アフリカ各地でスマートフォンの普及に伴い2015年ごろから拡大し始めました。2020年以降、この働き方の変化は急激に加速しました。新型コロナウイルスの世界的な流行がこの流れに拍車をかけ、数百万もの人々がデジタル・ギグワークに踏み出したのです。
世界銀行の推計によると、現在2,100万人を超えるアフリカ人がパートまたはフルタイムのギグワークで収入を得ています。アフリカのギグワーカー増加率は年率およそ11%で、他のほとんどの地域を上回っています。世界のギグエコノミー市場は2024年時点で5,567億米ドルと評価され、2032年までには3倍の1兆8,000億米ドルに達すると予測されています。
ギグワークには、配達や輸送のような対面の業務と、世界中の企業からデザインやプログラミングなどの業務を請け負う、国境を越えたデジタル業務があります。ラゴス、アクラ、ナイロビのような都市は、その両方においてアフリカ地域の重要な拠点となっています。ナイジェリアでは、若者の35%が何らかの形でフリーランスとして働いています。
アフリカの労働力は際立って若く、デジタルプラットフォームを介して労務を提供する働き手の多くが30歳未満です。このような働き方の変化の中で女性は存在感を増しており、アフリカのオンライン・ギグワーク人口の約27%を占めています。
アクラのコワーキングスペースにあるデスクが、シンディ・サリーの仕事場です。彼女は、一部の運営機能をコンゴ民主共和国に置くアメリカ企業の財務チームでリーダーを務めています。1日200ガーナセディ(約18.5米ドル)のレンタル料を支払い、ほとんどの同僚とはモニター越しに顔を合わせます。
ダイアナとは異なり、シンディ・サリーは外貨で収入を得ています。彼女の勤務時間はアメリカのタイムゾーンに合わせており、午前遅くに始まり夜まで長引くことも多々あります。
国境を越えたギグワークを始める前、シンディ・サリーはガーナの地元企業で激務に就いていました。そこでは仕事のペースが合わず、経済的に不安定で仕事量も多かったため、長くは続けられなかったと言います。