インドでは、長い間、「人身売買と性の仕事は同じだ」という間違った考えがありました。そのため、無理やり働かされている被害者も、自分で選んで性の仕事をしている大人も、同じ法律で扱われてきました。これまでの法律は、人が無理やりさせられることと、自分の意思で選ぶことの違いを区別できていなかったのです。
しかし、2024年5月29日、インドの最高裁判所は新しい判断をしました。この判断で最も重要なのは、「人身売買」と「大人が自分の意思で性の仕事をすること」は違う、と認めたことです。さらに、被害者を守るための詳しい計画や、人身売買についての新しい法律を作るよう、政府に求めました。
最高裁は「初期調査」という新しいルールを始めるよう命令しました。警察に助けられた大人が「自分の意思でこの仕事をしています。施設には入りたくありません」と言った場合、裁判官はそれが本当にその人の気持ちか、まず確認しなければなりません。これは、一人一人が自分で決める権利を大切にする、大きな変化です。
この判断は、「尊厳」という考えをとても大切にしています。尊厳とは、人が人として大切にされることです。最高裁は、人身売買は人の尊厳を傷つけると言いました。そして、被害者が社会に戻るための支援を受けるのは、被害者の「権利」であり、政府の「義務」だと決めました。これにより、被害者は政府に支援を求めることができます。
しかし、この判断だけでは解決しない課題も多くあります。インドでは今も人身売買が深刻な問題で、2024年には約5,800人が被害にあいました。また、性の仕事そのものを法律で認めるべきかという問いは残っています。この新しい判断を本当の社会の変化につなげるためには、議会が新しい法律を作り、政府が努力を続けていく必要があります。