オーストラリアでは、環境にいいエネルギー(再生可能エネルギー)を作るための施設に反対する運動が大きくなっています。研究によって、なぜ地域の人たちがこれほど強く反対するのか、その理由が分かってきました。それは、みんなが「仲間だ」と感じる気持ちや、人とのつながりです。また、政府などを信じられないという不信感も関係しています。これらの気持ちが、住民の不満を大きな反対運動に変えているのです。
農家の人たちは、自分たちの大切な土地やきれいな景観がなくなること、火事の危険などを心配しています。しかし、反対する理由はそれだけではありません。反対運動に参加することで、人びとは新しい友達を作ったり、社会的なつながりを強めたりしています。普段は遠くに住んでいてあまり会えない農家も、運動を通して会う機会が増えました。同じ目的のために活動することが、人びとの生きがいになっています。つまり、反対運動は、友情や帰属意識(グループの一員だと感じること)を見つける大切な場所なのです。
しかし、この「仲間だ」という強い気持ちは、別の問題を生むこともあります。自分たちのグループ(「わたしたち」)と、意見が違う人たち(「あの人たち」)との間で、深い対立が生まれることがあります。「あの人たち」とは、政府やエネルギーの会社、計画に賛成する人たちのことです。たとえば、エネルギー施設を自分の土地に作ることを認めた農家は、「地域を裏切った」と非難されることがあります。このような対立は、コミュニティに悪い影響を与えてしまいます。
この問題は、人びとがどの情報を信じるかにも影響します。政府への不信感が強いと、公式の情報よりも、仲間から聞いた情報を信じやすくなります。たとえその情報が間違っていてもです。ある地域では、「政府が農地の70%をエネルギー施設で覆う」という偽情報が広まりました。これは事実ではありませんでしたが、多くの人が信じてしまいました。ですから、ただ「事実はこうです」と説明するだけでは、問題を解決するのは難しいのです。
エネルギーの問題を考えるとき、忘れてはいけないことがあります。それは、この問題が技術や経済だけの話ではないということです。反対運動は、人びとの気持ちや生活と深く結びついています。解決のためには、政府や会社が地域の人たちの声を聞き、その気持ちを尊重することが重要です。そして、お互いを信じられる信頼関係を築くことが必要です。運動を支えているのは、反対する理由だけではありません。そこで生まれたコミュニティの「絆」そのものが、大きな力になっているのです。