7月13日に開催かいさいされた国連こくれんの「先住民族せんじゅうみんぞくの権利けんりに関かんする専門家機構せんもんかきこう」(EMRIP)の会合かいごうで、沖縄から出席しゅっせきした複数のNGO、専門家せんもんか、活動家かつどうからが登壇とうだんし、日本政府に対たいし琉球りゅうきゅう民族の先住民族せんじゅうみんぞくとしての法的地位ほうてきちいを承認しょうにんし、沖縄県全域ぜんいきに広ひろがる米軍べいぐん基地によって引ひき起おこされてきた長年ながねんの問題もんだいを解決かいけつするよう要請ようせいした。

この問題もんだいが国連こくれんで取とり上あげられたのはこれが初めてではない。2008年以降いこう、国連こくれんの複数の委員会いいんかいは日本政府に琉球りゅうきゅう民族を先住民族集団せんじゅうみんぞくしゅうだんとして認みとめるよう、これまでに6度どにわたり勧告かんこくしてきた。しかし、日本政府は彼かれらへの先住民族せんじゅうみんぞくとしての認定にんていを繰くり返かえし拒否きょひしているのが現状げんじょうである。

日本は単一民族国家たんいつみんぞくこっかと認識にんしきされがちだが、アイヌと琉球りゅうきゅう民族は、日本が統一とういつされる以前いぜんの古ふるくからの歴史れきしと文化ぶんかを有ゆうしている。アイヌ民族は独自どくじの言語げんごと宗教的慣習しゅうきょうてきかんしゅうを持もち、地理的ちりてきには北海道を拠点きょてんとする一方いっぽう、琉球りゅうきゅう民族は彼かれらの創世神話そうせいしんわによれば数千年すうせんねんにわたり琉球りゅうきゅう列島れっとうに居住きょじゅうし、15世紀せいきには独立どくりつした琉球王国りゅうきゅうおうこく(1429年~1872年)として統一とういつされていた。

2001年3月以降いこう、国連機関こくれんきかん、特とくに国連こくれん人種差別撤廃じんしゅさべつてっぱい委員会いいんかい(CERD)は、アイヌと琉球りゅうきゅう民族の土地とちと文化ぶんかを保護ほごするため、両者りょうしゃの先住民族せんじゅうみんぞくとしての地位ちいを公式こうしきに認みとめるよう、日本政府に勧告かんこくしてきた。

アイヌの先住民族せんじゅうみんぞくとしての地位ちいは2008年に最終的さいしゅうてきに承認しょうにんされ、2019年にはアイヌ施策推進法しさくすいしんほうとして法制化ほうせいかされた。これによりアイヌは北海道の発展はってんへの参画さんかくが可能かのうとなり、アイヌを中心ちゅうしんとした観光かんこう・商業しょうぎょう・産業さんぎょうへの資金提供しきんていきょうも受うけられるようになった。しかし、日本政府は国連こくれん先住民族せんじゅうみんぞくの権利けんりに関かんする宣言せんげん(UNDRIP)に沿そった、自己決定権じこけっていけんや土地とち・天然資源てんねんしげんに対たいする権利けんりを含ふくむ、先住民族せんじゅうみんぞく固有こゆうの権利けんりまでは付与ふよしていない。

一方いっぽうで琉球りゅうきゅう民族の自己決定権じこけっていけんと先住民族せんじゅうみんぞくとしての地位ちいを求もとめる歩あゆみは、大日本帝国だいにっぽんていこく時代じだい、明治時代めいじじだい(1868年~1912年)に始はじまった強力きょうりょくな同化政策どうかせいさくにより阻害そがいされ、その後ごも沖縄を占領せんりょうした米軍べいぐんの存在そんざいが重おもい負担ふたんとなり、その進展しんてんを妨さまたげてきた。

かつて琉球王国りゅうきゅうおうこくは中国ちゅうごくと日本の間あいだを仲介ちゅうかいする交易こうえきの要衝ようしょうとして繁栄はんえいした。中国ちゅうごくの明朝みんちょう、清朝しんちょうの時代じだいに朝貢関係ちょうこうかんけいを結むすぶ一方いっぽうで、1609年より日本の薩摩藩さつまはんの支配しはいを受うけ、二重支配にじゅうしはい体制下たいせいかで王国おうこくを維持いじしたが1872年に日本に完全かんぜんに併合へいごうされた。その後ご、沖縄は1世紀せいき以上いじょうにわたる強制的きょうせいてきな同化政策どうかせいさくに直面ちょくめんしてきた。伝統的でんとうてきな琉球りゅうきゅうの姓せいは日本式しきの姓せいに変更へんこうされ、沖縄の宗教的慣習しゅうきょうてきかんしゅうは禁止きんしされ、日本の神道しんとうが優先ゆうせんされた。学校がっこうでは琉球りゅうきゅうの文化ぶんかは劣おとったものとされ、琉球語りゅうきゅうごは標準語ひょうじゅんごの「後進的こうしんてきな」方言ほうげんであると教おしえられてきた。

2009年、ユネスコは琉球諸語りゅうきゅうしょごを消滅しょうめつの危機ききにある言語げんごに指定していし、早はやければ2050年にも消滅しょうめつする可能性かのうせいがあると警告けいこくした。しかし、その「方言ほうげん」という位置いちづけのため、言語復興げんごふっこうに向むけた国家政策こっかせいさくは存在そんざいしない。沖縄の言語学者げんごがくしゃ、下地しもじ則のり氏しは自身じしんのブログで日本の言語政策げんごせいさくについて次つぎのように述のべている。

「この琉球諸語りゅうきゅうしょごがまさに今いま消滅しょうめつの危機ききにあって、現在げんざいの琉球りゅうきゅう列島れっとうの人々ひとびと(私わたしを含ふくむ)は日本語にほんごへの収束しゅうそくが進すすみつつあるが、それを指さしてヤマトの側がわが『あなたたちはもはや日本人にほんじんで、あなたたちの話はなす言語げんごはただの方言ほうげんだ』というのは、放火犯ほうかはんが『あなたの家いえ、燃もえましたね』というに等ひとしい。」

概おおむね、これらの同化政策どうかせいさくは琉球りゅうきゅうの先住民族せんじゅうみんぞく権利けんり運動うんどうを効果的こうかてきに抑制よくせいすることに成功せいこうしてきた。

2024年、沖縄県内の複数の市町村議会しちょうそんぎかいは、日本政府に琉球りゅうきゅう民族への先住民族せんじゅうみんぞく地位ちい付与ふよを求もとめる国連こくれん勧告かんこくの撤回てっかいを求もとめる議案ぎあんを可決かけつした。2022年の調査ちょうさによれば、沖縄県民の約やく60パーセントが自身じしんたちのアイデンティティは独自どくじのものであると認識にんしきしている一方いっぽう、95パーセントは自身じしんを先住民族せんじゅうみんぞくとは見みなしておらず、その主おもな理由りゆうは70パーセントが国連こくれんの枠組わくぐみにおける先住民族せんじゅうみんぞくの権利けんりについてほとんど認識にんしきしていなかったためである。先住民せんじゅうみん論争ろんそうが沖縄で不必要ふひつような分断ぶんだんを招まねきかねないことや、中国ちゅうごくからの外的干渉がいてきかんしょうが米軍べいぐん基地の全面撤去ぜんめんてっきょを招まねき、日本の国家安全保障こっかあんぜんほしょうに悪影響あくえいきょうを及およぼしかねないとの懸念けねんも示しめされている。

これにより、先住民族せんじゅうみんぞくの権利けんりを求もとめる活動家かつどうかたちは、承認しょうにんによる自己決定権じこけっていけんの獲得かくとくと、地域ちいきの安全保障あんぜんほしょうの低下ていかという二律背反にりつはいはんの中なかで、困難こんなんな選択せんたくを迫せまられているのが現状げんじょうである。

今日こんにち、沖縄全域ぜんいきには31の米軍べいぐん基地が点在てんざいする。これらの基地きちは琉球りゅうきゅう民族による先住民族せんじゅうみんぞくの権利けんり主張しゅちょうをさらに阻害そがいしてきた。

第二次世界大戦中だいにじせかいたいせんちゅう、米軍べいぐんは琉球りゅうきゅう諸島しょとうを占領せんりょうし、数十万人すうじゅうまんにんの琉球人りゅうきゅうじんを居住地きょじゅうちから強制的きょうせいてきに移動いどうさせ、島々しまじま全域ぜんいきに大規模だいきぼな軍事要塞ぐんじようさいを築きずいた。1945年から1972年まで沖縄では米軍べいぐんの軍政ぐんせいが敷しかれ、太平洋東部たいへいようとうぶに位置いちする沖縄は、朝鮮戦争ちょうせんせんそう(1950年~1953年)やベトナム戦争せんそう(1955年~1975年)では米陸海軍べいりくかいぐんの兵站へいたんを支ささえる重要じゅうような戦略拠点せんりゃくきょてんとなった。

沖縄の広範こうはんな抗議運動こうぎうんどうの結果けっか、米国べいこくはこの島しまを日本に返還へんかんせざるを得えなくなったが、日米地位協定にちべいちいきょうてい(SOFA)のもとでは、米軍べいぐん関係者かんけいしゃは依然いぜんとして治外法権的ちがいほうけんてきな特権とっけんを享受きょうじゅし、地元住民じもとじゅうみんに対たいして犯罪はんざいを犯おかした場合ばあいでも現地げんちでの訴追そついを免まぬかれるケースが多おおい。

日本国内こくないにおいて、沖縄は米軍べいぐん基地の70パーセントが集中しゅうちゅうしている。今日こんにち、米軍べいぐんは沖縄の土地とちの15~18パーセントを基地きち・施設しせつのために占有せんゆうしている。正式せいしきな許可きょかと安全審査あんぜんしんさなしには、地元じもとの沖縄県民はこれらの基地きちに立たち入いることはできない。

この結果けっか、地元住民じもとじゅうみんは過密かみつな市街地しがいちでの居住きょじゅうを強しいられる一方いっぽうで、米軍べいぐん基地内ないでは、アメリカ式しきの庭付にわつき一戸建いっこだて住宅じゅうたくが広大こうだいな敷地しきちを占しめ、居住空間きょじゅうくうかんの格差かくさが顕著けんちょである。たとえば、衛星写真えいせいしゃしんを見みると、嘉手納飛行場かでなひこうじょうと周辺しゅうへん市街地しがいちの建物たてもの密度みつどの大おおきな違ちがいが確認かくにんできる。